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愛がなければ視えない。多分。
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※北方水滸伝二次


青蓮寺発足の話。激しく捏造。
フリーダムな洪清と乙女な袁明が許せる方のみどうぞ。ほんのり洪袁。

青蓮寺のメンツが愛しすぎる。

   *

 これが。
 これが――この男の行き着いた先。この男と私の、修羅の道の果てに見出したもの。
「これが」
 思わず口に出していた。
 傍らにいた主は無言で執務机に着いた。

「――青蓮寺と云う」

 青蓮寺。
「本当に、よろしかったのですか」
 数多の人間を踏み台にした。その命を弄び、その心を踏み躙って来た。そうして手に入れたのは、血塗られた“玉座”に他ならない。
 ――否。
 この男以外の人の命など、塵芥同然ではないか。
 どれだけ軽んぜられようと、蹂躙されようと、それは当然のことなのだ。
「心にもないことを」
 少し老けたのかもしれぬ。
 私も同様に老いているのだろう。
「そうですね。失礼いたしました」

 ――袁明様。

 主は静かに肯く。
 この男の横貌が好きだった。常に傍らに在ったからこそ、享受できた幸福――それはおそらく、どちらかが死ぬまで続くのだろう。
 ――死ぬ?
 死ぬ――のだろう、いつかは。何年後になるか、何十年後になるか、それは判らぬ。もしかしたら明日かもしれぬし、老いさらばえるまで無様に生きているのかもしれぬ。
 悪夢のような権力闘争を掻い潜っても生きているのだ。簡単に死ぬとは思えない。だが、人は人だ。不死でもなければ万能でもない。死ぬときは矢張り死ぬのだ。
「袁明様」
 この男の芳香(かおり)が好きだった。
 首に腕を回す。
 華奢な躰が愛おしい。
 私が護るもの――護ってきたもの――護らねばならぬもの。
「洪清」
 主の手が私の腕に触れた。

 ――すまない。

 何故謝るのだろう。
「如何されたのです」
「……わからぬ。誰でも善いから、誰かに許されたいのかもな」
「辛いのですか」
「私には、そう思うことなど許されていないだろう」
 人を捨てた。
 『共に人を捨てたのだ』。

「三界また火宅の如し、か」

 夜叉でも修羅でも――なればいい。
 薄く開いたままの口唇にそっと己のそれを重ねた。
「――仮令火焔に灼かれようと、決してお傍を離れますまい」
「洪清、私は――」
 舌を入れる。
 これ以上――。
 言っても傷付くだけではないか。
「洪清」
 袁明は顔を俯けた。

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